乱視/手乗川文鳥
 
断歩道の白と黒の境目を
縫うようにして歩くルールで
行って
そして
行った





/昔/山に囲まれた集落で祭があった/祭へ行く途中/少女は狐につままれた/いくら歩いても真っ暗で/世界はもうすっかり/眠り落ちてしまって/少女ばかりがひとり/目を閉じたまま歩いていて/もうもとの世界には/帰ることができないのだと/もう/行くしか/残像の手が/少女の手を引いて/行って/棺のある仏間/幻灯の模様/を追いかける/模様になったわたし/ずっとあの模様に届かなかったのは/わたしも同じく模様であったから/部屋の中央でそれを眺めている少女が/ずっと母であったのに/追いかけることに夢中で/気付
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