乱視/手乗川文鳥
 
気付かなかった/
咥内で溶けていく飴/
明滅しながら走る
窓の外がひかりはじめる
(あわあわ
ようやく祭が終わって
少女は母になる
次はわたしが
幻灯を眺める
/大人たちが口々に「おかえり」と言うので/
帰らざるを得なくなるまで/
そのようにして、うまれなかった、わたしたちのこども



晴れた休日に、わたしたちは、どこへも行かずに
服を着たままで、息を潜めながら/
(ぶれる
/身体の向こうに見える/(もういかんといかん
二重の窓枠/
夕方
一階のシンクで
貝は砂を吐いて死んだ/







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