乱視/手乗川文鳥
 
一度だけ行って/そして/行った/わたしのお祭/母は幼い頃/この祭に行く途中で狐につままれたのだと/後で話した/わたしは車の中で/おとうさんとおかあさんは/どうしてこんなに可愛くない人形を買い与えるのか/そのことを考えながら/人形とにらめっこして/そのうちに/眠った/



曇りの日にわたしたちは服を脱がずに性行為をしてそのまま眠った
真水のようなおとなと
無味無臭のこども
祖父の妹は耳が聞こえなくて喋ることができなかったが
わたしには彼女が伝えたいことが分かっていた
だから彼女のお葬式は少しも悲しくなかった
彼女は死んだけどこれは別れではないと知っていたから
幻灯が棺のある部
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