0/はるな
 
しいひとだったのだ。
「たいしたことないな」と、ほっとしたように言うメイロさんと、「ああ驚いた」という母と、振りむけば、「ごめんね、つい」とでも言いだしそうなベイビーがいて、わたしのほほには軽い擦り傷があった。銀杏は真っ黄色く熟していて、空がばかみたいに高らかに青かった。わたしは子どもだったけど、そのときはすぐに理解することができた。これはあるひとつの頂点なのだと。わたしと、母と、メイロさんと、ベイビーがつくることができる、ひとつの頂点なのだと思った。それは幸せなことだけど、同時にすごくかなしいことだったし、まだ子どもだったから言葉にできなかっただけで、いまだったらありったけの力で引き留めようと
[次のページ]
戻る   Point(1)