0/はるな
うとしたかもしれない。その幸せな頂点を。でも、できなかったから泣いた。大声を出して泣いた。母は「安心しちゃったのね。ばかね。」と笑い、メイロさんはもうちょっと意味を探して笑い、ベイビーだけがなにも言わずそこにいた。
あの、八歳の秋の日。帰ってから、ポケットに入れておいた宝ものをなくしたことに気づいて、わたしは泣いた。そういうふうに穏やかに日々は失われていくのだ。
ベイビーも、母も、メイロさんも、もうここにはいない。みんな大好きだったのに。わたしだけが、ここにいて、思い出を思い返している。
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