空間の定義/葉leaf
で実家へと進むトラックの中で、私は何かをあの空間に置き忘れてきた気がしていた。その忘れ物が、私の過去の身体の流れなのか、私の部屋にまつわる記憶の真意なのか、それとも空間そのもの、その味わいと苦しみなのか、私にはわからなかった。
彼女は駅のターミナルから市営バスに乗った。彼女はバスが少しだけ嫌いだった。アスファルトと乗車口に死のような段差がある。乗った時に椅子がみんな軍隊のようにそっぽを向いている。監獄よりも狭い椅子という空間に冷凍血液のように固まらせられる。揺れを意識しまいと彼女を洗脳する運転手の清潔な罪。だが今日の彼女はむしろバスを好いていた。新しい街の複雑な構造、建物の造作や看板の文字
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