空間の定義/葉leaf
文字・彩色、枝を払われた街路樹の生々しさ、それらが彼女を、一篇の長編小説のように楽しませた。バスが主人公で、流れていく建物や交差点は、小説内の露光され造形化された出来事のように思われた。印象的な店は新しい登場人物で、バスと恋愛したりするのである。そして彼女は美術館に着いた。地方の美術館の常設展を彼女は愛していた。彼女は一つの絵の前で立ち止まる。その絵には、それぞれの大きさをもった三つの灰色の長方形が無造作に置かれていた。彼女は軽いめまいに襲われた。そこにはあらゆる空間が、つまり、彼女を突き抜けて通路へと屈折していく空間、彼女が過去に深く望んだのだけれどそのまま死んでしまった空間、画家が憎んでいるのだけれど画家の体内に抉り込まれた空間、長方形がほかの絵たちと謀議するための空間が、融合し離別し鋭さを増していた。
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