空間の定義/葉leaf
 
 花々もなく、人生を折り曲げるほどの歓喜の思い出もなく、ただ学生として生きることが自然な網でもって捕えていく雑草のような物資だけのある部屋から、私は引っ越そうとしていた。引っ越すことの目的や理由、理想的な引っ越し、引っ越しの学的構造化、そんなものは、私の意識の裏側や、他人の意識や、誰の意識も届かない晴れた野原、その辺に転がっていて、私にはただ現実の沈殿物のような引っ越ししか頭になかった。父母が手伝いに来てくれた。家具や段ボール箱を、エレベーター経由で一階に下ろし、そこからトラックまで運んでトラックに積む。掃除も終わり、部屋は一個の、虚ろで清潔であたかも膨張していきそうな空間と化した。荷物を積んで実
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