悪桃太郎/オノ
おじいさんは悪いので、はたらきません。
おばあさんはおじいさんと目を見合わせて、
にやりと微笑むと、おもむろに懐からぎらつく
鉈を取り出し、桃を一刀両断せんと真っ直ぐに
刃を下ろしました。
しかし桃の中は空っぽ・・・
実のかわりに、なんと人間の赤ん坊が
生きて入っていたのです。
「まあ、玉のような悪そうな赤ん坊だこと」
おばあさんはしてやったりの表情で言いました。
「ああ、こいつはおあつらえむきだぜぇ」
おじいさんが往年の口調で言いました。
二人は桃から生まれた赤ん坊を悪桃太郎と名づけ、
大切に大切に育てました。
「おじいさん、おばあさん、お世話になりました。」
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