悪桃太郎/オノ
 
。」
ある日悪桃太郎は言いました。
「私をここまで立派に悪く育ててくれた恩は
きっと忘れません。
私は今日、悪い鬼を退治しに旅に出ます。
おじいさん、おばあさん、
どうか私の旅の安全を祈ってください。」
悪いおじいさんはさみしそうな顔をしましたが、悪いので、
実はさみしくもなんともありませんでした。
「お前が行くというのなら止めはしないよ。これを持ってお行き」
おばあさんはそう言うと、悪桃太郎にきび団子を渡しました。
しかし、悪いので、毒とか塩をたくさん入れました。
塩をたくさん入れたのは、毒を食べ過ぎないようにとの
気遣いからでした。
悪桃太郎はきびだんごを腰に、「日本一悪い」の旗を掲げて
仰々しく出発しました。
しかし、悪いので、すぐ近くの川原で大の字になり、
3時間寝て、帰ってきました。
おばあさんがおかえり、だんごは食べたのかい、と聞くと、
川に捨てた、と答えました。
悪桃太郎は毎日こういうことばかりやっています。
おばあさんは、悪桃太郎が食べないのなら団子に毒を入れる
のはやめよう、と思いました。
めでたしめでたし。
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