暖かすぎる不特定多数の個室から/ホロウ・シカエルボク
公園の着飾った女たちはゴスペルを歌っていた、あれはどのくらい前の出来事だ?
思い出せる記憶になんかまるで意味はなかった、それはいつでも確かにそうだった
土の下で、根を張り広がる植物のような水面下の記憶だけが意識を創り続けている
分かっているのかいないのか、何度も続く同じ世界だ
人生と同じだけの12月がいま、俺の背中で赤子のように泣いている、ぐずっている
早くから雪が降る、早くから雪が降るんだ、気象情報は夜にも積もると断言している、幾つかの注意報がもうすぐ年号を変える世界にささやかな期待と緊張を植えつける
凍える
強い風が吹いていた、俺は大きな河に掛かる橋を越えて
不特定多数な個室の
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