無人島に、一冊だけ/佐倉 潮
著者あとがきの裏には、君に宛てた僕の想いがありったけ書いてあるのだ。そんなのを残して無人島へ行った日には恥ずかしいし。だいいち君がある晴れた朝、偶然その頁を発見して、吃驚して後悔して、僕を追って無人島にまで現れるなんて事態にまで発展するかもしれない。そんな可哀相なこともできないし。だから僕が無人島へ行くと決めたなら、もう一度君のアパートに戻って、もう一度あの詩集を借りに行く。君のことだから、象の寝小屋みたいなあの本棚からすっと、そいつを摘み出してきて、「いつまで?」なんて野暮なことは聞きゃしないだろけど、もしかしたらその時、僕の様子が尋常じゃなかったりして少しだけ不審に思うかもしれない。そんな時、
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)