無人島に、一冊だけ/佐倉 潮
時、君はいつでも
「どうかした?」と尋ねるかわりに
「バカみたい」と言って僕を睨む。
あくまで僕の知ってる君でまだいてくれてたら、のはなし。
だけど僕は言葉が見つからなくて詩集を手にとってパラパラめくってみるだろう。
「あなた」「私の女性論」「宙ぶらりん」「赤・青・緑・・・」
幾度も二人で追いかけた言葉達を通り過ぎてそして最後の頁は、やっぱり開けずに終わるのだろう。そうやって僕の言葉はいつも正しい行き場を見失う。
だから君には悪いけどもし僕が無人島に行くとしたのなら、あとがきの裏だけぺりりと剥がして仲良くなった山羊のおやつにしてしまう。ついでに詩集は貰っちゃうつもりだから、欠けた隙間はぜひ別な『お気に入り』で埋めてほしい。僕のひとりよがりな行為が生んだ、それが唯一つの自然となるよう祈るから、無人島から、心から。
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