チアーヌさん「かわいい匂い」に関する私見/佐々宝砂
、自分の分身がいとおしい、かわいく思えるのは当たり前である。その点に思い至ったとき、この詩はずいぶん母性的なよい詩に見えるけれども、実は、強烈な自己肯定・自己愛の詩に過ぎないのではないか、と私は考えてしまったのであった。とはいえ、強烈な自己肯定の詩が悪いとは言わない。そういう詩があったって私はかまわん。
この詩を(私にとって)ひっかかるものにしている「かわいい」という言葉は、たとえば恋愛詩における「愛してる」「好き」などという言葉と似たような問題を持つ。要はあまりにも当たり前すぎるのである。好きだと書いていいなら詩は要らない。淋しいときに淋しいと書いてすむなら詩は要らない。同様に、実際かわ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(31)