チアーヌさん「かわいい匂い」に関する私見/佐々宝砂
 
おきたい。「こどものいないおまえにはわからない」という台詞を私に向けないでいただきたい。その台詞は私にとって刃だ。向けられることに慣れた刃ではあるけれど、いくら慣れても刃であることに変わりはないので、あまり向けられたくはないのである。

 しかし私は子どもを書いた詩が嫌いというわけではない。

 たとえば、俳句で、「短夜や乳ぜり泣く子を須可捨焉乎(すてっちまおか)」というのが 竹下しづの女にある。これなら私にもよくわかる。短く寝苦しい夏の夜、子どもがギャースカ泣いていたら、捨てちゃおかという気分になることもあろう、想像はつく。「須可捨焉乎」という半ば自棄をおこしたような漢文調も、この
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