線路沿いの春の日に/鵜飼千代子
 
       あの頃は遠く
             電車の音がしている と言った
             電話線の向こうの君は
             いまはもう いない

             今日もキィと線路をこする音を響かせて
             まるごと家を揺らしているよ
             ちょっとの地震じゃ驚かないね
             君に言って笑っていた
             わたしのこころを置き去りに

             大嘘つきの可愛い君が
             電話の向こうで笑っているよ
         
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