陪席する触媒/木屋 亞万
 

これが予兆だったわけです

やがて火花がパチパチと散り始めて
小さな白い花がパッと開いては消え、開いてはまた消えてというのを繰り返し
男の輪郭が次第にてるてる坊主のように丸みを帯びていきました
相変わらずその男は陪席の彼女に向かって何かを叫んでいます
残念ながら滑舌が悪くて何を言っているか聞き取れませんでしたが
もしかしたらそれはメッセージとしての声ではなく
被告人が壊れていくときの音だったのかもしれません

10分ぐらいすると被告人の声も低くくぐもり始めて
最後に一際大きな光を放つとシュンと大人しくなりました
もともと黒いスーツを着ていた男は最初の3分の2くらいの大
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