陪席する触媒/木屋 亞万
 
の大きさの黒い塊になりました
そっと駆け寄った裁判長が触るとその塊はぼろぼろと崩れ落ちてしまいました

結局その裁判は始まることのないまま終わってしまって
その出来事をきっかけに彼女は裁判官をやめてしまいました
小さな裁判所での出来事だったので
幸いメディアの目には触れることもなく
ちょっとした報告書と噂話だけが残りました

そして彼女はその後、地球に入ってくる星を
怒らせて光らせて溶かしてしまう魔法使いに弟子入りして修行をしているそうです
その魔法使いが言うには裁判所での出来事は、彼女の才能の開花の場面ではあっても
その男が溶けた原因は触媒の彼女にはなく、むしろその男自体に由来するものなのだそうです
男が最終的に大爆発しなかったことに彼女の功績があるのだとさえ言っていました
そういくら言われても彼女の罪悪感は消えず、彼の命日には夜通し流れ星の作っているようで
今でもそれを夜空を彩る流星群として私たちは眺めることができるのです


戻る   Point(1)