毒虫/ホロウ・シカエルボク
転手は私のことをほんの少し気にして(あるいは心情的にそういうふりを装って)、頷いてドアを閉めて行ってしまった…ようやく笑い終えた私は待っていたバスが行ってしまったことに気付いて―あれほど待っていたバスが行ってしまったことに気付いて―いまこのときにも路上で干乾びて死につつある毒虫に激しい怒りを燃やす、私はベンチから飛び上がり、野獣のように唸りながら毒虫に噛みつく、噛みついたまま揺さぶると毒虫の肌は裂け、黄色い体液が唇をつたう、毒虫の体液はどんな言葉でも表現できないような、どうしようもない絶望の味がする…私は怒りが度を越してしまい、わけが判らなくなってへたり込む、夕焼けが始まるころ、誰かが私を迎えに来
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