毒虫/ホロウ・シカエルボク
に来る…私のどんなわがままも素知らぬ顔で聞き流す人たち、許容の広さが優しさなのだと、慈愛なのだと、心からそう信じているいけすかない偽善者たち…私は、許してほしいわけじゃないのに…!私は道路の真ん中でへたり込んで叫び声を上げる、一台の黒い車がホーンを鳴らして、そんな私を避けながら罵声を浴びせて行く…そうよ、そうじゃなくちゃいけない、そうじゃなくっちゃ…私は私の牙のことを思う、私の牙が私の喉笛まで届くことが出来たらいいのに…それが出来るのならばこんな思いをしなくても済むのだ、私の牙が私の喉笛まで届くのならば…私は私の牙を憎む、もしも私が私を殺すことがあるのなら、私は私の牙でしかそうしたくはない、なのに、なのに……一台の、綺麗に磨かれた白い車が私のところへやってくる、あの中には、私がよく知っていて、そして私のことを少しも知らない優しい人たちが乗っている…
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