アゲハの時間/その人のいた場所/
 

その人は、午前か午後かわからないけれど、天気のいい日(晴れ間のある時間)、少なくともクスノキなんかの街路樹が生い茂る歩道を歩いていた可能性が高いし(葉のすき間から宝石のよーな木漏れ日が、その人の足元にキラキラこぼれ落ちているよーな、ビル街の歩道)、そうゆう情報が含まれている。

ゆるやかな天体の運行により、午前と午後で樹木に射す日の向きが変わると、アゲハはその人のいる歩道側ではなく、車がびゅんびゅん行き交う車道側を飛行するようになるかもしれないし、もしかしたら車道を挟んで、反対側の歩道のすこし上の、樹木のミドリの輝きに沿って飛ぶようになるかもしれない。
季節はたとえば初夏くらいで、
[次のページ]
戻る   Point(4)