絶え間なく流れ続ける音楽のこと/及川三貴
い
潮 岩 砂あるいは流木の上を彼女は歩いて進む水がこんなにも近くにあって夜の複雑な美しさが音楽を奏でる
泣いている?どうして?かなしいことがかなしい?
昼すぎの陽の陰りが記憶の中心で 靴を履いたままそっと水の中に右足を差し出して前に進んだの
あの日から流れていた音楽が彼女を包み込む
いいえ、そんなものじゃない
なにもかんがえられない
いきたい
と水に問いかけたかどうか
私が知った力の中で私から発せられた言葉の中であの時程に残酷な言葉は存在しない
遠く離れた場所から帰ってきた彼女は抱き締めれば抱き締めるほど水が溢れて膨れあがった顔は観ることさえかなわない
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