海嘯/天野茂典
 
り組んだ地形
  津波は町を飲み
  川を遡り
  桑の木をなぎ倒した
  地震が起きたあとだった
  地震は季節に関係はない
  どてらを羽織る凍える夜でも突然ぐらっとやってくるのだ
  水平に揺れている
  関東大震災は垂直だった
  だから大丈夫とたかをくくるものもでたが
  波高は優に20mを越え防潮堤はやくにたたなかった
  鰯の大漁が冬までつづき
  鮑が大量発生した
  よだ、
  父よ、母よ、兄よ、弟よ、姉よ、妹よ
  凍死した
  溺死した
  波状攻撃するよだに
  奪われてしまった多くの財産
  チリ沖地震のあおりも食った
  壊滅的な
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