フリー・フォール/ホロウ・シカエルボク
 
現れた、透明な体液でしっとりと濡れていた、身体はヒトデよりも少し、手足に当たる部分が長かった、ワルツだ、ワルツを踊れとそいつは言った、俺はなにも口にすることが出来ず、そいつを眺めつづけた、そいつは、部屋中を這い、壁を登った、登りながらワルツだと繰り返していた、ワルツとは何だ?俺は聞き返さなかった、そいつには答えられそうもなかった、たった一個のプログラムで動き続けるおもちゃのようなものだ、そいつは天井にぶち当たると力を失くし、床にふわふわと落ちて、死んだ、いや、しぼんだ、と言う方が適切かもしれない、ともかくそいつの存在はここからなくなった、俺は膝を抱えて座った、壁にもたれ、天井を眺めた、天井には血の
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