フリー・フォール/ホロウ・シカエルボク
したらそれは練り上げられたような深い赤色の血の塊だった、赤ん坊の掌のような形をしていた、指にあたる部分がふるふると揺れていた、俺は言い知れぬ畏れを覚えながら見つめた、やがて指がポロポロと落ち、残った部分が小さく膨れ上がり、ヒトデのような形をしたものが生まれた、俺は目を限界まで大きく見開いてそいつのことを見つめた、そいつは震え、確かめるように身体をあちこちに動かしながら、小さく、声を発していた、呟いていた、ワルツ、ワルツと、そう聞こえた、ワルツ?と俺は聞き返してみた、ワルツ、ワルツ!とそいつは叫んだ、いやにはっきりとした声で、そう叫んだとき、口のあたりからボロボロと表皮が崩れ落ち、そこに俺の顔が現れ
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