験潮儀/天野茂典
 
 

  赤い傘差して今日も雨
  カタツムリは縮こまって
  濡れている
  陸上競技場のアンツーカーはけぶり
  女子大生は傘を差して自転車に乗ってやってくる
  雨の日は少し喉が軽くなって
  愛を告白できそうだ白いあなたの耳元で
  もう緑の剥げ落ちた樹木は魅力がない
  これから山のちいさなバスターミナルまで歩いてゆくのだ
  新潟地震の被災者をおもいやりながら
  この島国が火山列島であることを思い出すためにも
  牛乳は飲まない
  珈琲を飲んだ
  朝は長いのだ
  酸性雨はきらいだ
  春雨じゃ、濡れてゆこうというわけにはゆかない
  時代はい
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