鬼になった子供(鬼吉と春一番)/板谷みきょう
ん時だ。真っ赤な火みてえに真っ赤な、おっかねえ顔した鬼が、ものすごい形相で村さ向かったのは。はやて風みてぇにな。
悔やみ切れずに屏風山から風みてぇに村さ向かっての。悔やんでも、悔やんでも、人間には戻れねえっての。それが、吉だ、吉だったんだとよ。ごおっごおってな、音をたててすげえ速さでよ。
したけど、村に着いた時には、鬼の姿は消えておって澄乃の家の垣根を揺らしたのは、春一番だったんだとよ。
なしてかってか。なしてって、日本中の八百万の神さま仏さまさ、村のモンが鬼になった吉は村さ入れねぇ様に、偉えお坊様に願掛け祈祷ばして貰ったからだじゃ。
ほっぺだ赤ぐして、霜焼けだらけで、馬そり残した跡オ
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