鬼になった子供(鬼吉と春一番)/板谷みきょう
 
跡オメェだぢが、滑って遊んだりしてるべ。さんびじゃ、さんびじゃって芯から、しばれた冬によォ。したけど、ほっこり、ぬぐくなる前に屏風山から『ごおーっ』ってな。おっきな音立でで強え風、吹いで来るべや。山おろしだで。…ありゃあ、吉がよォ、春一番になって、澄乃に逢いに来たもんセ。…うんだんだ。…いんや、んだども今ァわしらに、冬の間ァ、良ぐ辛抱したなァって春ば教えに来るんだべなぁ。…ばっちゃは、そったらふうに思えでしょうがないのセ…。…アレっ…オメェまんだ寝てねぇんか。目サ、涙っコ溜めで…何、…可愛想だってが…。んだけどなァ吉はよ、風になってもようォ、豊作ん時も飢饉ん時にもよォ、毎年々々「良ぐ頑張ったなぁー
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