月が来る、音のない葬送のあとで/ホロウ・シカエルボク
 
いまを忘れて
読んだ
虫のように
砂に混じり


どうしたことだろう
まだ、時は満ちないのか
今日はもう
満ちぬまたなのか


どこから来たのか
美しい痩せた猫が
ひょいと
頭上でとびあがる
おまえ


おまえ
何をしている
海が怖くないのか
おれやおまえのようないきものを
たらふく飲み込んだこの生命の根元が


ぎゃあ、と
猫は鳴いた
そして
暗闇に消えた
夜なのだ


わずかに覗いた星が
海面で跳ねて
あたりはうっすらと
輝きをとり戻し
そうしておれは
いまだ
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