月が来る、音のない葬送のあとで/ホロウ・シカエルボク
 

来た道を知らず
猫の
小さな足跡をたどると
迷いなく
海中へと続いていた
海からこちらへ
駆け抜ける風からは
異国の血の
臭いがする


あいつは心のままに
あいつ自身の本能であろうとしたのだ
波が大きく膨らみ
おれの爪先を濡らす
なにかをねだる子供のように
小さな確かさで


おれは
手を合わせる
そんなもの
あの猫はきっと
喜んだりしないだろうが
おれは祈った
言葉を持たず
ただ手を合わせた


目をあげると
白樺色の
月が
こちらを見下ろして
にやりとしていた
いまいましいが
どうしようもなかった




ああ
飲まれちまうな






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