蝶の刺青/豊島ケイトウ
 
そこに多くの鱗粉を落としてくれているあるいは君の無自覚がそうさせたのかもしれない
孤独の水位を見極めてから寄り添う二人はどこにでもいるけれど足首のあたりに優しさを見つけてほとんど衝動的に耳たぶを噛み合う二人はきっと僕たちだけだったそんなふうに考えることは慰めなのだろうかでも慰めを恥じるなんてばかばかしいじゃないかどうせなら盛大に自慰を行ってもいい

やがて君との回想も収斂していく今にもあふれ返りそうな花束の奥へ

僕たちははっきりとした円環をなしていなかった円環なんていらないと思ってあらゆる正常なものを暴力的に捨て去った――最終ページにデフォルメされた僕たちが笑っている交換日記さえいつの
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