蝶の刺青/豊島ケイトウ
はたくさんのことにたいして怯えたくさんのことにたいして建設的だったけれども水道の蛇口はしめようよちゃんとトイレのドアをノックしようよいきなり耳をふさぐのは公平ではなかった少なくとも僕の視界で刺青を発光させておくべきだったんだ、常に
篩にかけるような目が一義的な崩壊を表していたのだと今さらながら思うただこれだけは言わせてほしい恋愛に付着する君の空間で震えていた子機から聴かされるメロディーは恋愛などではなく勿論もっと病的な愛などでもなくたんなる気休めに過ぎなかった
君は僕がいることで安心しきっていたし僕も君がいることで安心しきっていたそれは見方を変えれば日の暮れたころにうっすらと窺い知れる
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