晩夏/Giton
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きみの瞳の奥にはぼくがいる
ひざを抱えた小さな男の子がいる
裸で寒さに震える細い肩きみの深い
瞳の底にはまだ誰も行ったことがない
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きみの瞳の奥には男の子がいる
入ってはいけない淵の底もう出られない
からっぽな部屋はからっぽじゃない
きみがいっぱいに詰まっている
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だからきみは溢れ出してぼくの
中に流れ込んで来る閉じてもふさいでも
流れ込んで来るきみはぼくの泪を通り抜け
からっぽなぼくに流れ込む
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(そしてあの靄にかすんだ夏の夕
悪魔に魅入られたようなあいびき)
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そらを覆っていた厚い
雲にぽっと穴が空き
光が墜ちてく
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