晩夏/Giton
てくる幾本も
幾本も束になって光が
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射し込んでくる:きみの低い声には
覚えがあるんだ森を抜けた先の
沼地に雨がしずかに沈んでいるきみは
いつもそうやってぼくに語りかけていた…
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(何ごとも無いかのように時を刻む
針だけが縺れ合うふたつの
身体をじっと見つめていた)
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そして黒い瞳の奥にはきみがいた
思いがいっぱいに詰まった瞳から
きみは溢れ出して来たぼくのなかに
満たされない思いが闇の果てから
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じっとぼくを見ていたからっぽなのに
泣き疲れたぼくの中はもうからっぽなのに
きみにいったい何をあげられるだろう
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闇の果てで赤い光芒と
重い軋りを残して静かに
去って行く幼時の幻影…
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