イッチャの背中/せかいのせなか
 
たはえらい。あとからまとめるとどうもそういう意味らしかった。それってわたしには自分がないってことなん?そう訊き返すと、イッチャはちゃうちゃう、と言って、でもそれ以上の説明をするのがめんどうくさいという表情をしてビールをぐいっと飲んだ。

結局大学のあいだわたしには恋人ができず、就職活動にもさして熱が入らず、自然と四年間イッチャとばかり過ごすことになった。文芸学科になんて入るからだとのちになって母親はこぼしたが、わたしはあまり気にせず卒業後は京都の実家に舞い戻り、コールセンターや塾講師のアルバイトをしながらなんとなくふわふわと世間をわたっていた。イッチャがなにをしているのかは知らなかったが大阪に
[次のページ]
戻る   Point(6)