イッチャの背中/せかいのせなか
またじわりじわりとからだじゅうに広がって非論理的な探究心めいたものが呼びおこされ、ご褒美をもらえない子どものように結局彼のうしろをついて歩くのだった。イッチャはイッチャで、べつだん話がはずむわけでもおなじ趣味をもつでもないわたしのことを鬱陶しがることもなく相手をしてくれていた(といっても、ほとんどにおいて彼はただそこにいて黙りこんでいるだけだったが)。いまおもえば、あれはわたしたちなりの時間つぶしの口実だったのかもしれない。
あんたはさあ、焦ってへんからええよ。酒がまわって多少雄弁になったイッチャにはじめてそう言われたとき、ほめられたのかけなされたのかわからなくなって束の間かたまってしまった
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