交錯詩「月」 フライハイ/森川 茂/within
 
を掻き分ける

アポロ計画より少し後に生まれたわたしは

悲しい目をしてこちらを見ているのは誰?

初の地球外天体の映像に間に合わなかった

何かを忘れた

様々な顔を持ち

思い出せないけど何かを忘れた

気紛れに見えて規則的に満ち欠け

この器に何を盛るつもりだったのか

満月の夜はドクター・ジキルをハイドに変え

路上で歌っていた幼い少年は

狼男まで出現させるという

一握りの愛にありつけただろうか

そう 眩し過ぎる太陽の下では

放浪する鴎は大気圏を倦み

ジキルはハイドにはなれない

ただ夜の訪れを待っている

満月
[次のページ]
戻る   Point(6)