交錯詩「月」 フライハイ/森川 茂/within
を掻き分ける
アポロ計画より少し後に生まれたわたしは
悲しい目をしてこちらを見ているのは誰?
初の地球外天体の映像に間に合わなかった
何かを忘れた
様々な顔を持ち
思い出せないけど何かを忘れた
気紛れに見えて規則的に満ち欠け
この器に何を盛るつもりだったのか
満月の夜はドクター・ジキルをハイドに変え
路上で歌っていた幼い少年は
狼男まで出現させるという
一握りの愛にありつけただろうか
そう 眩し過ぎる太陽の下では
放浪する鴎は大気圏を倦み
ジキルはハイドにはなれない
ただ夜の訪れを待っている
満月
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