中編小説 心と口と行いと生活で 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
根本的な問題として、何故、此の現代と不釣り合いな建築物である、白亜の巨城が毎週土曜日に成ると姿を現したのか、全く訳が分からなく成った。しかし、一つだけ確実である事は、?王女?という存在の命が、私の記憶の中から殆ど全て消え失せてしまったという事だけである。だが、どうして、私の記憶の中で起こった出来事が、現実に影響を及ぼすのだろう。私と先輩は今でも土曜日に成ると、地下鉄を乗り継ぎ、市電に乗って、今では有名な観光スポットと成ったあの森へ行き、白亜の巨城を訪れる。バロック音楽に似た、パイプオルガンの音は聞こえて来ない。私と先輩の思い出の場所が観光客達に依って奪われた事に、私は寂しさを感じる。そして、先輩と
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