中編小説 心と口と行いと生活で 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
中で、一番温かいものだった。其れは淹れ立ての珈琲よりも私の心を暖めてくれた。そして私達は御互いに長い口づけを終えると、手を繋いで王女の寝室へ向かい、何度も結ばれ合った。其の行為は陽が暮れ、暗闇が下り、梟の鳴き声が聞こえても、果てしがない様に続いた。

 目が覚めると、私の隣には裸体の先輩が眠って居た。私はベッドから立ち上がり、服を着ると、窓辺に立ち、すがすがしい日曜日の朝の陽の光を浴びた。そして思った。私は先輩の自殺を食い止めたのだと。先輩は現実の世界に蘇ったのだ。

 私は螺旋階段を下りて調理場で珈琲を淹れ、其処の壁に凭れながら其れを一杯飲み、残りをトレイに食器一式と一緒に置いて王女の寝
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