中編小説 心と口と行いと生活で 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
の寝室へと戻った。すると白い裸体の先輩がベッドの上で上半身を起こしたまま、窓の外の景色を見つめて居た。先輩は私が王女の寝室の扉を閉じた時に私の方へ振り返り、微笑みを浮かべた。その表情は、昨日の其れとは全く異なり、非常に大人びた笑みであった。
「お早う」
「お早う御座います」
「なんだか、とても長い夢から覚めたみたい」
先輩は私から珈琲の入ったカップを受け取り、両手で包み込むと、ベッドの右側に在る、大きな鏡台に視線をやった。
「なんだか、鏡に映っている自分を見ると、自分が自分じゃないみたい」
先輩はまた笑みを零した。そして珈琲を一口、口に含んだ。
「ますます美しさが増した様に見えま
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