中編小説 心と口と行いと生活で 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
律を嘆き続けていた。やがて正階段を上り、王女の間に着き、扉を開けて中へ入ると、突然、パイプオルガンの演奏は止まり、底の無い静寂が私達の周りに纏わりついてきた。
次の瞬間、私は眉を潜めた。其れは、いつも、どんな時でも、私がこの白亜の巨城にやって来た時、扉の正面に在る窓の前に立って居るはずの王女が、?存在していなかった?からである。私は自分の目を疑った。普通では無い此の脳裏に映る光景が、私を激しく混乱させ始め、私は視線を左右に彷徨わせたが、先輩に瓜二つの王女は何処にも居なかった。
「ねぇ、私に瓜二つの王女様は何処に居るの?」
先輩は私の方に顔を向け、不安そうに私に訊ねたが、私には容易に其の答
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