中編小説 心と口と行いと生活で 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
るのかしら? こんなにも悲しく、美しい音色を表現できる人は……」
「パイプオルガン自身がこの音色を奏でているのですよ。プログラミングされた自動演奏の事を言っているのではありません。本当に、?パイプオルガン自身?が自ら意思を持ち、歌っているのです」
先輩は驚いた表情を私に向けたが、私が表情一つ変えずに真剣に彼女を見つめていた為に、少し間が有った後、ゆっくりと頷いた。
「さぁ、巨城の中へ入りましょう」
私は先輩の背中に右手を置くと、彼女は動き出し、私達はひどくひんやりとしている白亜の巨城の中へ入った。
私達二人が王女の間へ続く螺旋階段を上がっている時も、パイプオルガンは悲しい旋律を
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)