中編小説 心と口と行いと生活で 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
私は一歩前に進み出し、彼女に声を掛けた。
「さぁ、先輩、王女と共に、明日が終わるまで此の巨城で過ごしましょう」
「う…、うん…」
先輩は戸惑いがちに動揺している視線を下に向け、頷くと、彼女もまた一歩前に進み出し、私の右手を強く握り返した。
私達二人は白亜の巨城の正門の扉の前に立った。虫や鳥の鳴き声が絶えず森の至る所から聞こえて来る。私は青銅の輪を引き、扉を開けた。すると、中から冷たい空気が流れて来て、其れは私の肉体の中心部の熱を急激に冷まさせた。其れと同時に、私達二人を此処まで導いた、悲しいパイプオルガンの音がよりはっきりと聞こえる様に成った。
「誰がパイプオルガンを弾いているの
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