中編小説 心と口と行いと生活で 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
私とほぼ同時に白亜の巨城を視界に入れた先輩は、其の場で立ち尽くした。
「嘘……」
 先輩は絶句し、私が彼女に振り返ると、大きく美しい瞳を更に大きくして茫然と白亜の巨城を見上げて居た。
「先輩…、僕の事を信用して下さって本当に有り難う御座いました…。…実は此の巨城の中には、先輩に瓜二つの王女が住んで居るのです。其の王女と此の白亜の巨城……、いや、此の世界は、僕の記憶の中の世界なんです。…其れ以上の事は僕には分からないのですが……」
 私は先輩にそう告げたが、彼女はあまりの衝撃の為か、私に返事を返す事ができなかった。私は先輩の美しい横顔を見つめて居たが、ある時彼女の左手を強く握り締めると、私は
[次のページ]
戻る   Point(0)