中編小説 心と口と行いと生活で 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
て行った。先輩は私の唇から自分の其れを離すと、私は彼女の美しく魅力的な瞳の視線に、自分の其れを合わせた。
「先輩、僕と明日が終わるまでずっと一緒に居て下さい」
「分かった。貴方の言う通りにする」
 私と先輩は立ち上がり、悲しいパイプオルガンの音が聞こえて来る方角に顔を向けると、私達は再び手を繋ぎ合い、其の方角に向かって歩き始めた。

   四 何かを得る為には、何かを失ってしまわなければならないという事

 幾つもの茂みを掻き分け、暫くいつもの道を歩き続けていると、どんどん悲しいパイプオルガンの音が大きく成っていき、ある時突然視界が開けると、其処には、白亜の巨城が立ち聳えていた。私と
[次のページ]
戻る   Point(0)