中編小説 心と口と行いと生活で 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
は? それに、?此処?は?貴方の記憶の世界?なんかじゃなくって、?本当の現実の世界?よ? 今日の貴方、本当にどうかしてるわ…」
 私は先輩の瞳を見つめながらゆっくりと首を横に振り、とうとう涙を流した。
「先輩、僕を信じて下さい、御願いします…」
 私は地面に跪き、頭を垂れ、先輩にそう哀願した。すると突然パイプオルガンの音も悲しい音に変わって、一陣の生温い風が私と先輩の間を通り過ぎた。
「…分かった。…分かったから顔を上げて……」
 先輩は私と同じ様に地面に跪き、私の両手を取ってそっと私の唇にキスをした。其れは長いキスであった。私の唇と先輩の其れの隙間を、先輩の涙の滴がゆっくりと侵食して行
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