中編小説 心と口と行いと生活で 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
私が彼女の左手を握り締めて歩き出すと、彼女は無言で少し俯いたまま、私の後に従った。

 私と先輩は所々で降り注いでいる、朝の光の木漏れ日に体を濡らしながら、森の奥深くへと歩き続けた。
「ねぇ、?白亜の巨城?って何? そんな城なんて、此の森の中には無かったわよ? 貴方一体どうしたの? なんだか、いつもの貴方じゃないみたい…」
 先輩は私の右手に左手を引っ張られながら、今にも躓きそうな歩き方で私にそう訊ねたが、私は視線を真っ直ぐに注いだまま、彼女の問いには答えなかった。パイプオルガンの明るい音は、私達が白亜の巨城に近付くにつれて、次第にはっきりと大きく聴こえる様になった。
「ねぇ、貴方、本当
[次のページ]
戻る   Point(0)