中編小説 心と口と行いと生活で 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
を見上げた。
「やっぱり今日は何処かで御茶でもしながら、御話し致しませんか?」
「どうして?」
 先輩は突然笑みを崩し、無表情で私に訊ねた。
「それは……」
 私にはすぐに、先輩に返す言葉が無かった。
「何を躊躇っているの? いつもなら、貴方が率先して私を森の奥へ連れて行ってくれるはずなのに。ねぇ、なんか深刻な顔しているけど、大丈夫? どこか具合でも悪い? それなら、いつもの場所に行かないで今日は帰る?」
 先輩は自分の顔を私に近付け、瞬きを数回した。私は王女と瓜二つの先輩の美し過ぎる瞳を見つめて居ると、私は彼女の其の表情を脳裏にしっかりと刻み込み、自分の両瞼を閉じ、心のままに彼女の
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