中編小説 心と口と行いと生活で 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
其の中へ入り、彼女と瓜二つの王女の姿を見たら、彼女は確実に激しく混乱してしまうであろう。
「いや、僕には全くパイプオルガンの音なんか聴こえませんよ」
 私がそう誤魔化すと、まるで私達二人の会話を白亜の巨城の礼拝堂から聴いていたかの様に、突如、其の音は鳴き止んだ。
「私の空耳かな? まぁいいや、兎に角、いつもの森の拓けた場所へ行かない? 私、此の一週間の貴方に話したい事が沢山あるの。さぁ、行こう!!」
 先輩は私の左手を掴むと、笑顔を振り撒きながら私を引っ張って森の奥へ入って行こうとした。
「先輩!!」
「何?」
 先輩は振り返り、ブロンズに染めたショートボブの髪の毛を翻し、私の顔を見
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