黄昏の比率 / ****'01/小野 一縷
種の色の空気との摩擦音
聞こえるんだ
巻貝の貝殻の思い出が歌う 正確無比の波の音が
知覚を鋭く研いでゆく音
そう 耳鳴りよりも鋭利な
次に 見た
遥か高い空を目差して手放した風船の数々を
曇り空の下で見上げている人
そして 聞こえてきた
遠くを撃つ祝砲の音が 何度も突風を叩く音
心臓が破裂する一歩手前の心地良い動悸の中 逞しく
悠々と進む騎馬の蹄の音が浮き立っていた
訓練され尽くした兵士達の足音の裏をとって
彼らもまた見ていた 色とりどりの風船の行方を
漠然としたまま ほったらかしの忠誠心の揺らめきの合間から
見えた
空へ昇る風船と 戦地
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